会社の商号は「原則自由」に決められます。しかし会社法・商業登記法上、実務でつまずきやすい制限がいくつも存在します。ここでは司法書士の実務目線で、商号にできることとできないことを整理します。
商号選定自由の原則
会社法上、商号は原則として自由に選定できます(商号選定自由の原則)。ただし、この自由には次のような例外・制限がかかっています。
商号にできること
使える文字
漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字(大文字・小文字)、アラビア数字が使用できます。
使える符号
「&」「’」「,(コンマ)」「-(ハイフン)」「.(ピリオド)」「・(中点)」の6種類が使用可能です。ただし符号は商号の先頭・末尾に使うことはできません。唯一の例外がピリオドで、会社の種類を示す部分(「株式会社」など)を除いた商号の末尾に置くことだけは認められています。ローマ字を複数の単語で表記する場合に限り、単語間にスペースを入れることも可能です。
注意点
- 符号は商号の先頭・末尾には使えません(例:「・山田商事株式会社」はNG)。
- 唯一の例外はピリオドで、「株式会社」などの前に置くこと(「Sunrise.株式会社」のような形)だけ認められています。
- ローマ字を複数の単語で書く場合に限り、単語の間にスペースを入れられます(例:「Tokyo Sunrise株式会社」)。
OK例:「山田&佐藤株式会社」「Tokyo-Sunrise合同会社」
会社の種類を示す文字
「株式会社」「合同会社」など、会社の種類を商号中に表示することが会社法上義務付けられています(これは「できること」というより「必ずしなければならないこと」です)。
フリガナの記載
平成30年(2018年)3月12日以降、商業・法人登記の申請書には商号のフリガナ欄が設けられており、カタカナで(会社の種類を示す部分を除いて)記載します。このフリガナは国税庁の法人番号公表サイトで公開されますが、登記事項証明書自体には表示されません。
商号にできないこと
使えない文字・記号
ローマ数字(ⅰ、ⅱなど)、アルファベット以外の外国語文字、「@」「Ⅰ」「Ⅱ」「Ⅲ」「!」「?」などは使用できません。
NG例:「Ⅰ商事株式会社」「@Design株式会社」
支店・部門を示す文字
「支店」「支社」「出張所」といった文字は商号中に使えません。同様に「事業部」「経理部」「開発部」「不動産部」「販売部」「出版部」など、会社の一営業部門を示すような名称も使用できません。
NG例:「山田商事株式会社東京支店」(これは商号ではなく支店名として扱われるべきもの)
他の会社と誤認されるおそれのある名称
会社法8条は「何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない」と定めています。かつてのような市区町村単位での類似商号審査は廃止されましたが、この規定自体は残っており、有名企業と紛らわしい商号を不正の目的で使えば、差止請求や損害賠償請求の対象になり得ます。法務局が事前審査で弾いてくれるわけではない点に注意が必要です。
同一の所在場所における同一商号
類似商号規制は廃止されましたが、商業登記法27条により「同一の所在場所」に「同一の商号」を登記することは今も禁止されています。裏を返せば、住所が異なれば同一商号でも登記自体は通ってしまうということです。
特定業種を示す文字
「銀行」「信託」「保険」など、各業法で使用が制限されている文字を、その業の免許・登録を受けていない会社が商号に用いることはできません。
公序良俗に反する商号
公序良俗に反する名称は登記官の審査により却下される可能性があります。
まとめ
商号選定の自由度は高い一方で、文字・符号のルール、会社の種類の表示義務、誤認防止の規定、同一所在場所での同一商号禁止など、見落としやすい制限が点在しています。特に「類似商号規制の廃止」は同一住所でなければ登記自体は通ってしまうという意味であり、登記が通ることと紛争リスクがないことは別問題である点を、依頼者にも伝えておくと親切です。
