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「設立から何年も経つのに役員変更登記をしていない会社へ|登記懈怠・過料の実態と今すぐできる対処法」

「取締役の任期が切れていても、同じ人が続けているんだから、登記は必要ないよね?」

会社を経営されている方から、こんなご相談をよくいただきます。

実は、これが大きな落とし穴です。同じ人が再任される場合でも「重任登記」という登記手続きが必要で、怠ると100万円以下の過料(行政上の制裁金)に処される可能性があります。

本記事では、司法書士の視点から登記懈怠(とうきけたい)の仕組み、過料の実態、そして今すぐできる対処法を解説します。

目次

「重任登記」とは何か

会社の登記簿には、役員(取締役・監査役など)の氏名と就任年月日が記録されています。任期が満了して同じ人が再び就任する場合、登記上は「退任→再就任」という扱いになるため、登記事項に変更が生じます。

この手続きを「重任の登記」と呼びます。

法務省の公式見解(法務省ウェブサイトより)
「役員の任期が満了した後、間を置かずに同じ人が役員に選任(再任)された場合、役員は変更して いないので、役員変更の登記は必要ないと思っていませんか。このような場合も、任期満了により退任 した役員が再び就任するということになり、役員の登記事項に変更が生じていますので、忘れずに役員 変更の登記を申請してください(登記上は『重任』といいます。)。」
  出典:法務省「役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です」

取締役の任期|基本は2年、最長10年

取締役の任期は、会社法により以下のとおり定められています。

公開会社(上場会社など)

選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(会社法第332条第1項)。短縮は可能ですが、延長はできません。

非公開会社(同族会社・中小企業など)

定款で定めることにより、最長10年まで任期を伸長できます(会社法第332条第2項)。

⚠️ 注意:10年任期に設定した会社は特に注意が必要です   「10年に設定したから大丈夫」と安心していると、いつの間にか任期が切れていることがあります。 設定した年からカウントし、次の定時株主総会のタイミングを事前にカレンダーに登録しておきましょう。

登記の期限は「2週間以内」

登記事項に変更が生じた場合、その日から2週間以内に登記申請しなければなりません(会社法第915条第1項)。

取締役の重任であれば、任期満了日(株主総会で再選された日)から起算して2週間が期限です。

この期限を1日でも過ぎると、理論上は「登記懈怠」に該当します。

登記懈怠が発覚する仕組み

登記懈怠はどのように発覚するのでしょうか。主なルートは以下のとおりです。

① 法務局による定期チェック

法務局(登記所)は登記簿をチェックし、登記がなされていない会社を定期的に把握しています。懈怠が認められた場合、裁判所に通知します。

② 他の変更登記申請の際に発覚

住所変更や商号変更など別の登記を申請した際、司法書士や法務局の担当者が過去の懈怠に気づくことがあります。

③ 自社で気づいた場合

顧問税理士や司法書士から指摘されるケースも多いです。気づいた時点で速やかに申請することが重要です。

過料の実態|相場・誰に・いつ届く

法律上の上限と実際の相場

会社法第976条では「100万円以下の過料」と定めていますが、実際の相場はそれより大幅に低いのが実情です。

過料の相場(実務上の目安)
・1期の懈怠:約3万円程度 ・2期の懈怠:約6万円程度 ・長期(数年)になると金額が増える傾向あり   ※ 金額の決定基準は明確に公表されておらず、裁判所の裁量による部分が大きいです。

誰に届くのか

過料の決定通知書は「代表取締役個人」の住所宛に裁判所から届きます。会社宛ではありません。そのため、過料は会社の経費・損失に計上できません。代表者個人の負担となります。

いつ届くのか

登記が申請されると、法務局から裁判所に通知が行われ、その後裁判所が過料額を決定して通知書を発送します。申請から数か月後に届くケースが多いです。

過料は「刑事罰」ではない

「会社法違反事件」「被審人」という言葉が記載された通知書が届くため、大変驚かれる方が多いです。しかし、過料は行政罰(駐車違反の反則金のようなもの)であり、刑事罰ではありません。

✅ 過料について押さえておきたいポイント   ・前科にはなりません ・逮捕や起訴の対象にもなりません ・支払えば手続きは終了です ・ただし、支払いは代表者個人の負担(会社経費にできない)

12年放置すると「解散」とみなされるリスクも

過料よりさらに深刻なリスクがあります。それが「休眠会社整理作業」です。

休眠会社整理作業とは
最後に登記を行った時から12年を経過した株式会社(一般社団・財団法人は5年)は、 法務局の「休眠整理作業」の対象となります。   対象となった会社には官報公告と法務局からの通知が行われ、 一定期間内に「まだ事業を継続している」旨の届出または登記を行わない場合、 登記官の職権により「解散」の登記がなされます。   出典:法務省「休眠会社・休眠一般法人の整理作業の実施について」

解散とみなされると、会社を継続するためには「会社継続の登記」という手続きが必要になります。当然、費用も手間も増えます。営業を続けている会社が知らないうちに「解散済み」扱いになっていた、というケースが毎年発生しています。

まとめ

取締役の任期切れを放置することは、「100万円以下の過料」という直接的なリスクだけでなく、最終的には会社が解散とみなされるリスクにもつながります。

重任登記は「同じ人が続けているから不要」ではなく、「同じ人が続ける場合でも必要」です。この点を正しく理解し、定期的に自社の登記状況を確認することをお勧めします。

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