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後見制度支援信託って何?家庭裁判所から「検討してください」と言われたときに読む記事

「親が認知症になったので、子どもが成年後見人になった」——そのとき家庭裁判所から「後見制度支援信託を検討してください」と言われて戸惑った、という話をよく聞きます。

後見制度支援信託とは、簡単にいうと「後見人が自由に使えるお金に上限を設ける仕組み」です。被後見人(認知症の方など)の財産を守るために、家庭裁判所が導入を促す制度です。

この記事では、後見制度支援信託の仕組み・導入の流れ・親族後見人への影響・似た制度である「後見制度支援預金」との違いまでわかりやすく解説します。

目次

なぜこの制度ができたのか——親族による使い込み問題

成年後見人には、被後見人(認知症の方など)の財産を管理する強い権限があります。しかし、その権限を悪用した親族後見人による財産の使い込みが社会問題となりました。

📊 使い込み被害の実態

  • 平成23〜24年の2年間で900件以上・被害総額80億円超の使い込み被害が報告された
  • 加害者の約9割が親族後見人(子・兄弟姉妹・配偶者など)
  • 令和2年以降は年間被害総額が10億円を下回るまで減少——制度の効果が出始めている

このような状況を受け、最高裁判所を中心に制度の整備が進められ、平成24年(2012年)に後見制度支援信託がスタートしました。

後見制度支援信託の仕組み

後見制度支援信託の基本的な考え方はシンプルです。

💡 基本の考え方

被後見人の財産を「日常的に使うお金」と「通常使わない大きなお金」に分けて管理する。大きなお金は信託銀行に預け、後見人が自由に引き出せないようにする。

👤 後見人が管理するお金

日常的な支払いに必要な金銭(生活費・医療費・施設費など)。通常200万円程度を目安に後見人の管理する預貯金口座で管理する。

🏦 信託銀行等が管理するお金

通常使用しない金銭(残りの預貯金・定期預金など)を信託財産として管理。家庭裁判所の指示書なしには払戻しできない。

信託財産を払い戻す・追加信託する・契約を解除するには、すべて家庭裁判所が発行する指示書が必要です。後見人が単独で動かすことはできません。

「元本保証」と「運用利益」について

信託財産の元本は保証されます(預金保険の対象外ですが、信託銀行特有の分別管理により保護されます)。また、信託財産から運用利益(利息)が生じる場合があり、その収益は被後見人に帰属します。

誰が利用できるのか——対象と対象外

区分利用できるか
成年後見(法定後見)✅ 利用できる
未成年後見✅ 利用できる
保佐・補助❌ 対象外
任意後見❌ 対象外
信託できる財産の種類金銭のみ(不動産・株式等は不可)

⚠️ 信託できるのは「金銭のみ」です

不動産・株式・債券などは後見制度支援信託の対象外です。金銭のみを信託銀行に預けます。不動産などは通常どおり後見人が管理します。

導入までの流れ——専門職後見人がかならず関与する

後見制度支援信託の導入手続きには、必ず弁護士・司法書士などの専門職後見人が関与します。親族後見人が直接信託銀行と契約することはできません。

1 家庭裁判所が後見制度支援信託の検討を決定

新たな後見開始申立てがあった場合、または既に後見人が選任されている場合でも、裁判所が必要と判断したとき。財産額が大きい・親族間で紛争がある・不正リスクがあるなどの場合に検討される。

2 専門職後見人(弁護士・司法書士等)が選任される

信託手続きを進めるために、家庭裁判所が専門職を後見人として選任する。本人の生活状況・財産状況・遺言書の有無などを調査・検討する。この段階で専門職への報酬が発生する。

3 専門職後見人が家庭裁判所に報告書を提出

信託する財産の額・利用する信託銀行等を設定し、家庭裁判所に報告。裁判所が内容を確認・承認する。

4 家庭裁判所が「指示書」を発行

専門職後見人に対して信託契約の締結を指示する書面。この指示書がなければ信託契約を結べない。

5 信託銀行等と信託契約を締結・信託スタート

専門職後見人が指示書を信託銀行に提出し、本人を委託者兼受益者とする信託契約を締結。金銭を信託する。その後、専門職後見人は関与の必要がなくなれば辞任し、親族後見人に財産管理を引き継ぐ。

6 信託銀行が定期的に後見人の口座へ振込み

契約で定められた金額が定期的に後見人の管理する預貯金口座に振り込まれる。後見人はこの口座から生活費等を支払う。信託財産の払戻しが追加で必要な場合は家庭裁判所に申請して指示書を得る。

信託はいつ終わるのか

成年後見の場合、原則として被後見人が亡くなるまで信託は続きます。死亡時に信託は終了し、信託財産は相続財産として相続人に分配されます。

親族後見人への影響——メリットとデメリット

✅ 親族後見人にとってのメリット

  • 財産管理の負担が軽減される——大きなお金は信託銀行が管理するため、後見人が管理するのは日常的なお金だけ
  • 「使い込み疑惑」を受けにくくなる——他の親族から「お金を使い込んでいるのでは」と疑われるリスクが減る
  • 後見監督人が不要になる場合がある——支援信託を利用することで、別途監督人が選任されないケースがある
  • 年1回の家庭裁判所への報告が比較的シンプルになる

❌ 親族後見人にとってのデメリット

  • 導入時に専門職後見人への報酬が発生する——数十万円程度の費用負担が生じる
  • 緊急の大きな出費に対応しにくい——急な入院・手術費用などが必要な場合も、まず家庭裁判所への申請が必要
  • 信託銀行への管理報酬が継続的にかかる——信託財産から年間数万円程度の報酬が引かれる
  • お金を動かすたびに家庭裁判所の指示書が必要——手続きに時間がかかる
  • 利用できる信託銀行が限られる(全国規模の信託銀行が中心)

⚠️ 家庭裁判所から求められた場合、基本的に拒否は難しい

後見制度支援信託の利用は任意ですが、家庭裁判所が必要と判断した場合に「利用しない」という選択をすると、代わりに後見監督人が選任されることが多いです。後見監督人への報酬は継続的に発生するため、費用面では支援信託の方が有利なケースも多くあります。

「後見制度支援預金」との違い

後見制度支援信託と似た制度に「後見制度支援預金(後見制度支援貯金)」があります。基本的な仕組みは同じですが、いくつかの違いがあります。

後見制度支援信託後見制度支援預金
管理先信託銀行一般の銀行・信用金庫等
取扱金融機関全国の主要信託銀行地域の銀行・信用金庫等(増加中)
運用利益生じる場合がある利息のみ(微少)
管理報酬信託報酬あり(年数万円程度)口座管理手数料あり(金融機関による)
口座開設手続き専門職後見人が行う親族後見人自身が行う
地域での利用しやすさ都市部中心地方でも利用しやすい

後見制度支援預金は比較的新しい制度で、地方の金融機関でも取り扱いが広がってきています。信託銀行が近くにない地域や、信託銀行への馴染みが薄い被後見人には支援預金の方が利用しやすいケースがあります。

まとめ

  • 後見制度支援信託は被後見人の財産を「日常のお金」と「大きなお金」に分けて管理する仕組み
  • 親族による財産の使い込みを防ぐために平成24年にスタートした制度
  • 大きなお金の払戻し・解約には家庭裁判所の指示書が必要——後見人が単独で動かせない
  • 利用できるのは成年後見・未成年後見のみ(保佐・補助・任意後見は対象外)
  • 信託できるのは金銭のみ(不動産・株式等は対象外)
  • 導入時には専門職後見人が必ず関与し、費用が発生する
  • 親族後見人にとっては管理負担の軽減・疑惑回避のメリットがある一方、緊急対応のしにくさ・費用というデメリットもある
  • 似た制度に後見制度支援預金があり、地方では利用しやすい場合がある

「家庭裁判所から後見制度支援信託を検討するよう言われた」「親族後見人になったがどう管理すればいいかわからない」という方は、お気軽に司法書士へご相談ください。

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