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自己破産すれば借金は全部なくなる?——免責されない借金「非免責債権」をわかりやすく解説

「自己破産すれば借金が全部なくなる」——そう思っている方は少なくありません。

たしかに自己破産で免責許可が下りれば、ほとんどの借金は返済義務がなくなります。しかし例外があります。税金・養育費・罰金など、自己破産をしても絶対に消えない借金があるのです。

これを「非免責債権」といいます(破産法第253条第1項)。この記事では、非免責債権の種類・具体例・よくある誤解をわかりやすく解説します。

📌 この記事でわかること

  • 自己破産で免責されない借金(非免責債権)の種類
  • 「悪意の不法行為」「養育費」など各種の具体例と注意点
  • 奨学金・慰謝料・社会保険料は免責される?されない?
  • 非免責債権が払えないときの対処法
目次

「免責」とは何か——自己破産の仕組みをおさらい

自己破産の手続きが完了し、裁判所から「免責許可決定」を受けると、原則としてすべての借金の返済義務が消滅します。これを「免責」といいます。

ただし免責には2種類の「例外」があります。混同されやすいので整理しておきます。

❶ 免責不許可事由(破産法252条)

ギャンブル・浪費・詐欺的借入などが原因の場合、免責自体が認められないことがある。免責が下りなければすべての借金が残る。ただし裁判所の裁量免責で認められるケースも多い。

❷ 非免責債権(破産法253条)← 今回のテーマ

免責許可が下りても、特定の借金だけは消えない。ギャンブルが原因かどうかに関係なく、債権の性質上免責されない。

この2つは別の話です。「免責不許可事由があっても、裁量で免責が認められることがある」一方、「免責が認められても、非免責債権だけは残り続ける」ということです。

非免責債権の種類——破産法253条が定める7つ

破産法第253条第1項は、非免責債権を以下の7種類に定めています。

① 租税等の請求権(1号)——税金・社会保険料の滞納

具体例

  • 所得税・住民税・消費税・固定資産税・自動車税の滞納分
  • 国民健康保険料・国民年金保険料の滞納分
  • 下水道利用料金(公的な性質のもの)

理由:他の納税者との公平性を保つため、公的な請求権は免責しないとされている

⚠️ 税金の滞納は自己破産後も徴収される

免責後も税務署・市区町村は滞納税を徴収できます。財産への差押えも継続します。税金の滞納がある場合は、税務署や市区町村の窓口で分割納付の相談を行うことが重要です。

② 悪意で加えた不法行為の損害賠償(2号)

「悪意」とは何か

ここでいう「悪意」とは、単なる「知っている」ではなく「積極的に相手を害しようとする意思」のことをいいます。

具体例

  • 故意に他人を傷つけた暴行・傷害の慰謝料・治療費
  • 詐欺行為による損害賠償
  • 横領・窃盗による損害賠償

💡 よくある誤解:不倫の慰謝料は「悪意」に当たらないことが多い

不倫・浮気による慰謝料は不法行為に基づく損害賠償ですが、「積極的に配偶者を害しようとした意思」がなければ「悪意」には当たらず免責されるケースが多いです。ただし個別の事情によるため、司法書士・弁護士への相談を推奨します。

③ 故意・重過失による生命・身体への損害賠償(3号)

具体例

  • 飲酒運転・無免許運転による交通事故の被害者への損害賠償(死亡・傷害)
  • 故意の暴行・傷害による治療費・慰謝料
  • 重大な過失による事故での人身被害の賠償

②との違い:②は「悪意(積極的加害意思)」が必要。③は「故意または重大な過失」で「人の生命・身体への損害」が要件。人身被害の重大性から、より広く非免責とされている。

④ 親族関係に基づく請求権(4号)——養育費・婚姻費用

具体例

  • 養育費(離婚後に子どものために支払う費用)
  • 婚姻費用(別居中の配偶者・子への生活費)
  • 夫婦間の扶養義務に基づく請求

⚠️ 養育費は自己破産しても絶対に消えません

「自己破産したから養育費は払わなくていい」は完全な誤りです。養育費の不払いは、強制執行(給与差押え)の対象になります。また養育費の不払いは子の生活に直結するため、法律上も強く保護されています。

⑤ 雇用関係に基づく使用人の請求権(5号)——従業員への給料

具体例・注意点

  • 個人事業主(雇用主)が自己破産した場合の従業員への未払い給料
  • 退職金・残業代なども含まれる

注意:法人(会社)が破産した場合は、法人自体が消滅するためこの問題は生じない。5号は個人事業主が雇用主のケースに適用される。

⑥ 債権者名簿に記載しなかった債権(6号)——申告漏れ

破産申立時に提出する「債権者一覧表」に記載がなかった債権者は、原則として免責の効果が及びません。故意だけでなく「うっかり忘れた」場合も含まれます。

例外(記載がなくても免責される場合)

  • その債権者が破産手続開始決定があったことを知っていた場合は免責の効果が及ぶ
  • 手続き中であれば債権者一覧表の補正で対応できる場合がある

⚠️ 債権者の記載漏れは「免責不許可事由」にもなりうる

意図的に一部の債権者を記載しなかった場合、免責自体が認められなくなる可能性があります。借金の相手先はすべて正確に申告することが不可欠です。

⑦ 罰金・科料・追徴金・過料(7号)

具体例

  • 罰金(刑事罰として科される金銭的制裁。交通違反・窃盗・傷害など)
  • 科料(罰金より軽い刑事罰)
  • 追徴金(没収できない利益などを追徴するもの)
  • 過料(行政上の秩序罰。登記懈怠・行政法規違反など)

理由:刑事上・行政上の制裁は、犯罪や違反の抑止・制裁という公的目的があるため、個人的な免責で消えないとされている

⚠️ 交通違反の罰金は自己破産後も支払いが必要

スピード違反・駐車違反などの罰金・反則金も非免責債権です。破産後も支払い義務が残ります。

「これは免責される?されない?」——よくある疑問を整理

債権の種類免責されるか補足
消費者金融・カードローン✅ 免責される一般的な借金は免責の対象
奨学金(日本学生支援機構)✅ 免責される非免責債権の列挙に含まれない。ただし保証人への影響は別途検討が必要
不倫・浮気の慰謝料△ 多くは免責される「悪意」(積極的加害意思)がなければ免責。個別判断が必要
交通事故の損害賠償(過失)△ 過失の程度による通常の過失は免責。飲酒・無免許など重大な過失は非免責
養育費・婚姻費用❌ 免責されない親族関係に基づく請求権として非免責
税金・社会保険料の滞納❌ 免責されない租税等の請求権として非免責
罰金・科料・追徴金❌ 免責されない刑事上の制裁は免責されない
飲酒運転事故の損害賠償❌ 免責されない故意・重大な過失による人身被害として非免責

非免責債権が払えないときの対処法

自己破産後も非免責債権の支払い義務は残ります。払えない場合どうすればよいでしょうか。

税金・社会保険料の滞納

  • 税務署・市区町村の窓口で分割納付の相談——誠実に相談すれば分割に応じてもらえるケースが多い
  • 差押えを受けている場合は、執行停止・猶予の申請も検討できる

養育費の不払い

  • 支払能力が著しく低下している場合は、家庭裁判所に養育費の減額調停を申立てることができる
  • 「払えない」のと「払わない」は別問題。不払いのまま放置すると給与・財産への強制執行につながる

損害賠償(交通事故・不法行為)

  • 相手方と分割払いの和解交渉を行う
  • 任意保険に加入していた場合は保険会社が支払うケースも

💡 司法書士ができること・できないこと

司法書士は自己破産申立ての書類作成・裁判所への提出をサポートできます。ただし訴訟代理(裁判での代理)は弁護士の業務です。非免責債権をめぐる訴訟が発生した場合は弁護士への相談が必要です。司法書士はその橋渡しも行います。

まとめ

  • 自己破産で免責が下りても「非免責債権」は消えない(破産法253条)
  • 非免責債権は税金・社会保険料/悪意の不法行為賠償/人身事故賠償(故意・重過失)/養育費等親族関係の請求権/従業員への給料/申告漏れ債権/罰金・科料・追徴金・過料の7種類
  • 養育費は絶対に免責されない——「破産したから払わない」は通じない
  • 奨学金・不倫慰謝料(悪意なし)は原則として免責される
  • 飲酒・無免許運転による人身事故の賠償は非免責
  • 税金の滞納は、破産後も分割納付の交渉が可能
  • 養育費が払えない場合は減額調停という手段がある

「自己破産を検討しているが、非免責債権があって不安」「どの借金が残るのか知りたい」という方は、まず司法書士にご相談ください。状況を整理したうえで、最適な解決策をご提案します。

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