不動産を購入したとき・相続したとき・担保に入れたとき、必ずかかるのが登録免許税です。
実はこの登録免許税、一定の要件を満たせば税率が大幅に下がる軽減措置があります。知っているかどうかで数万円〜数十万円の差が出ることも珍しくありません。
この記事では、令和8年度税制改正の最新情報も含め、不動産登記にかかる登録免許税の軽減措置を種類別・期限別にわかりやすく整理します。
📌 令和8年度税制改正(2026年)の重要ポイント
土地の売買にかかる登録免許税の軽減措置が令和11年(2029年)3月31日まで3年延長されました(租税特別措置法第72条第1項)。住宅用家屋・抵当権の軽減措置は令和9年(2027年)3月31日まで継続中です。
登録免許税とは——いくらかかるのか
登録免許税とは、不動産の登記申請をする際に国に納める税金です。「固定資産税評価額×税率」で計算します。
| 登記の種類 | 本則税率 | 課税標準 |
|---|---|---|
| 所有権保存登記(新築) | 0.4% | 固定資産税評価額 |
| 所有権移転登記(売買・建物) | 2.0% | 固定資産税評価額 |
| 所有権移転登記(売買・土地) | 2.0% | 固定資産税評価額 |
| 所有権移転登記(相続・遺贈) | 0.4% | 固定資産税評価額 |
| 抵当権設定登記 | 0.4% | 債権金額 |
たとえば評価額2,000万円の土地を売買で取得した場合、本則では40万円の登録免許税がかかります。軽減措置を使えばこれが大きく下がります。
軽減措置の種類と税率——一覧表
| 軽減措置の種類 | 本則 | 軽減後 | 適用期限 | 根拠法令 |
|---|---|---|---|---|
| ① 土地の売買・所有権移転 | 2.0% | 1.5% | R11.3.31 | 措法72条1項 |
| ② 住宅用家屋・所有権保存(新築) | 0.4% | 0.15% | R9.3.31 | 措法72条の2 |
| ③ 住宅用家屋・所有権移転(中古) | 2.0% | 0.3% | R9.3.31 | 措法73条 |
| ④ 抵当権設定登記(住宅ローン) | 0.4% | 0.1% | R9.3.31 | 措法75条 |
| ⑤ 特定認定長期優良住宅・保存 | 0.4% | 0.1% | R9.3.31 | 措法74条 |
| ⑥ 特定認定長期優良住宅・移転(戸建) | 2.0% | 0.2% | R9.3.31 | 措法74条 |
| ⑦ 特定認定長期優良住宅・移転(マンション等) | 2.0% | 0.1% | R9.3.31 | 措法74条 |
| ⑧ 認定低炭素住宅・保存・移転 | 0.4%/2.0% | 0.1% | R9.3.31 | 措法74条の2 |
| ⑨ 買取再販(特定増改築)住宅・移転 | 2.0% | 0.1% | R9.3.31 | 措法73条の2 |
| ⑩ 相続登記・100万円以下の土地 | 0.4% | 免税(0円) | R9.3.31 | 措法84条の2の3 |
🔑 期限が「建物と土地で違う」ことに注意
土地の売買にかかる軽減(①)は令和11年3月31日まで、住宅用家屋の各種軽減(②〜⑨)は令和9年3月31日までと期限が異なります。土地と建物を同時に取得する場合でも、それぞれ別の期限が適用されます。
各軽減措置の適用条件を詳しく解説
① 土地の売買による所有権移転登記の軽減(措法72条1項)
2.0% → 1.5% 適用期限:令和11年(2029年)3月31日
- 取得原因が「売買」または「競落」であること(贈与・相続は対象外)
- 個人・法人いずれも適用可能(住宅用かどうかは問わない)
- 住宅用家屋証明書は不要
令和8年度税制改正で令和8年4月1日から令和11年3月31日まで3年間延長されました。以前の期限(令和8年3月31日)から大幅に延長されています。
②③ 住宅用家屋の所有権保存・移転登記の軽減(措法72条の2・73条)
適用期限:令和9年(2027年)3月31日
共通要件(②③とも必要)
- 個人が取得すること(法人は対象外)
- 自己の居住の用に供する住宅であること
- 登記簿上の床面積が50㎡以上であること
- 新築または取得後1年以内に登記を受けること
- 併用住宅の場合は居住部分が床面積の90%以上であること
- 登記申請書に住宅用家屋証明書を添付すること
③(中古住宅の移転登記)の追加要件
- 取得原因が「売買」または「競落」であること
- 昭和57年(1982年)1月1日以降に建築された家屋であること(新耐震基準適合とみなされる)
- または、一定の耐震基準に適合していることの証明があること
④ 住宅取得資金の抵当権設定登記の軽減(措法75条)
0.4% → 0.1% 適用期限:令和9年(2027年)3月31日
- 住宅の新築または取得のための資金の貸付け等(住宅ローン)であること
- ②③の住宅用家屋と同じ要件(床面積50㎡以上・居住用・1年以内・住宅用家屋証明書)を満たすこと
⑤⑥⑦ 特定認定長期優良住宅の軽減(措法74条)
適用期限:令和9年(2027年)3月31日
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づく認定を受けた住宅。②③よりさらに軽減率が高いのが特徴。
- 新築または建築後未使用のものであること(中古の長期優良住宅には適用なし)
- 床面積50㎡以上であること
- 自己の居住の用に供すること
- 取得後1年以内に登記すること
⑧ 認定低炭素住宅の軽減(措法74条の2)
保存・移転ともに → 0.1% 適用期限:令和9年(2027年)3月31日
「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づく低炭素建築物の認定を受けた住宅。要件は長期優良住宅と同様。
⑨ 買取再販(特定増改築等)住宅の軽減(措法73条の2)
2.0% → 0.1% 適用期限:令和9年(2027年)3月31日
宅地建物取引業者が中古住宅を買い取り、耐震・バリアフリー・省エネなど一定の増改築工事を行った後に販売する住宅が対象。いわゆる「リノベーション済み中古住宅」に適用される。
※工事費用が譲渡対価の20%相当額(上限300万円)以上であること等の要件あり
⑩ 相続登記・100万円以下の土地の免税(措法84条の2の3)
0.4% → 免税(0円) 適用期限:令和9年(2027年)3月31日
- 個人が相続(相続人への遺贈を含む)により土地を取得したこと
- その土地の固定資産税評価額が100万円以下であること
- 一筆ごとに評価額を確認する(複数筆まとめて100万円では不可)
申請書の「登録免許税」欄に「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載する必要があります。記載がないと免税になりません。
「住宅用家屋証明書」とは——軽減を受けるための鍵となる書類
②〜④の軽減措置を受けるには、登記申請書に「住宅用家屋証明書」を添付することが必要です(⑤〜⑨も同様)。
住宅用家屋証明書の概要
- 発行する役所:住宅が所在する市区町村(役場の資産税課など)
- 手数料:1,300円程度(市区町村により異なる)
- 申請するタイミング:登記申請前(新築後・取得後1年以内)
- 有効期限:発行日から3ヶ月以内が目安(法務局により異なる)
⚠️ 取得を忘れると軽減を受けられません
住宅用家屋証明書は登記申請と同時に提出する必要があります。登記完了後に後付けで提出することはできないため、事前に市区町村で取得しておく必要があります。司法書士に依頼する場合は、必要書類の案内を受けながら準備を進めましょう。
実際いくら違うのか——計算例
| ケース | 本則 | 軽減後 | 節税額 |
|---|---|---|---|
| 土地(評価額2,000万円)を売買取得 2.0%→1.5% | 40万円 | 30万円 | ▲10万円 |
| 新築建物(評価額1,000万円)の保存登記 0.4%→0.15% | 4万円 | 1.5万円 | ▲2.5万円 |
| 中古建物(評価額800万円)の移転登記 2.0%→0.3% | 16万円 | 2.4万円 | ▲13.6万円 |
| 住宅ローン3,000万円の抵当権設定 0.4%→0.1% | 12万円 | 3万円 | ▲9万円 |
| 上記すべて合算(一般的な新築購入のケース) | 72万円 | 36.9万円 | ▲35.1万円 |
新築住宅を土地ごと購入する一般的なケースでは、合計で35万円以上の節税になることがわかります。軽減措置の活用は、マイホーム購入時の諸費用削減に大きく貢献します。
まとめ——期限と適用条件を押さえておこう
- 土地の売買にかかる軽減(1.5%)は令和8年度改正で令和11年3月31日まで延長
- 住宅用家屋の各種軽減は令和9年3月31日まで(土地と建物で期限が違う点に注意)
- 住宅の軽減措置は住宅用家屋証明書の添付が必須——取得を忘れると適用できない
- 長期優良住宅・認定低炭素住宅・買取再販住宅はさらに低い税率が適用される
- 相続で取得した100万円以下の土地は免税——申請書への記載が必要
- 中古住宅は「昭和57年1月1日以降の建築」か「耐震基準適合証明」がある場合に軽減適用
軽減措置の適用には要件の確認・証明書の取得・申請書への正確な記載が必要です。手続きでお困りの際は、お気軽に司法書士へご相談ください。
