MENU

【2026年最新版】相続時精算課税制度とは?2024年改正でどう変わったのかをわかりやすく解説

「相続時精算課税」という言葉、名前は聞いたことがあっても「暦年課税と何が違うの?」「最近改正があったらしいけど結局どうなったの?」という方は多いのではないでしょうか。

実はこの制度、2023年(令和5年)度の税制改正で見直しが決まり、2024年(令和6年)1月から新しいルールが適用されています。これまでよりもぐっと使いやすくなりました。今回は、制度の基本から最新の改正内容、そして「結局どっちを選べばいいのか」まで、順番に整理していきます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。

目次

そもそも相続時精算課税制度とは

相続時精算課税は、生前に贈与を受けた財産について、贈与税ではなく「将来の相続税」でまとめて精算する制度です。通常の贈与(暦年課税)と選択制になっています。

利用できる人

  • 贈与する側(贈与者):贈与する年の1月1日時点で60歳以上の父母・祖父母
  • 贈与を受ける側(受贈者):贈与を受ける年の1月1日時点で18歳以上の、贈与者の直系卑属である推定相続人(主に子)または孫

制度の骨格

  • 累計2,500万円までの贈与には贈与税がかからない(特別控除)
  • 2,500万円を超えた部分には一律20%の贈与税がかかる
  • 将来相続が発生したとき、この制度で贈与した財産は原則としてすべて相続財産に足し戻され、相続税として精算される

つまり「贈与税を先送りして、最終的には相続税で清算する」制度というのがポイントです。一度選択すると、その贈与者からの贈与については暦年課税に戻すことができない点にも注意が必要です。

利用するには、最初に贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、「相続時精算課税選択届出書」を戸籍謄本などとあわせて税務署に提出する必要があります。

2024年改正のポイント①:基礎控除110万円が新設

これまでの相続時精算課税制度には、暦年課税のような「毎年もらえる非課税枠」がありませんでした。少額の贈与であっても申告が必要で、しかも相続時にはすべて相続財産に加算される、という使い勝手の悪さが指摘されていました。

そこで2024年(令和6年)1月1日以後の贈与から、相続時精算課税専用の基礎控除110万円が新設されました。これが今回の改正の一番の目玉です。

具体的には、次のような変化があります。

  • 年間110万円までの贈与であれば贈与税がかからないのはもちろん、贈与税の申告自体が不要になった
  • しかも、この基礎控除の範囲内の贈与は、将来相続が発生しても相続財産に加算されない(暦年課税だと生前贈与加算の対象になるケースがあるのと対照的)
  • 2,500万円の特別控除とは別枠なので、たとえば年110万円ずつ贈与しながら、まとまった財産を贈与するときに2,500万円の特別控除を使う、という組み合わせ方もできる

この改正によって、相続時精算課税は「一度使うと選択後の贈与がすべて相続財産に持ち戻される、使いにくい制度」から、「毎年コツコツ贈与しても相続財産を減らせる制度」へと大きく性格を変えたといえます。

2024年改正のポイント②:災害を受けた土地・建物の価額を見直す特例

相続時精算課税は、贈与時の価額で将来の相続財産に加算するのが原則です。つまり贈与を受けた後に不動産の価値が下がっても、相続税の計算上は贈与時点の高い価額のまま持ち戻されてしまう、という不公平が起こり得ました。

この点を是正するため、贈与を受けた土地・建物が令和6年1月1日以後に発生した災害によって被害を受け、被災した部分の価額の割合が10分の1(10%)以上となった場合には、相続税の計算上、その被害に相当する価額を差し引いて評価できる特例が設けられました(租税特別措置法70条の3の3)。対象となるのは地震・風水害などの自然災害や火災などによる物理的な損害で、申請期限は災害が発生した日から3年を経過する日までとされています。該当しそうな場合は、要件の詳細も含めて早めに税務署や専門家へ相談することをおすすめします。

具体例で見てみる:基礎控除110万円のインパクト

言葉だけだとイメージしづらいので、簡単な例で確認してみましょう。

たとえば、父(65歳)から子(30歳)へ、相続時精算課税を選択したうえで毎年100万円ずつ10年間贈与したとします。合計贈与額は1,000万円ですが、年間の贈与額が基礎控除110万円の範囲内なので、贈与税はかからず、贈与税の申告も不要です。そして父に相続が発生した際も、この1,000万円は基礎控除の範囲内の贈与として相続財産に加算されません

一方、もし2024年改正前の制度(基礎控除なし)で同じことをしていたら、贈与のたびに(少額であっても)贈与税の申告が必要になり、かつ相続発生時にはこの1,000万円がまるごと相続財産に足し戻されていました。基礎控除110万円の新設が、いかに実務上のインパクトが大きいかがわかるかと思います。

もちろん、まとまった財産(自宅や自社株など)を一度に贈与したい場合は、これとは別に累計2,500万円の特別控除枠を使うことになります。たとえば2,500万円の自社株を贈与した年であれば、贈与税はかからないものの、この2,500万円部分は将来相続財産に加算されて相続税の対象になる、という点は改正前と変わりません。「基礎控除110万円の非課税枠」と「2,500万円の特別控除(=課税の先送り)」は性質が異なるものだと理解しておくと整理しやすいでしょう。

セットで押さえておきたい「暦年課税」側の改正

相続時精算課税と並行して、比較対象となる暦年課税(通常の贈与)の側にも大きな改正がありました。それが、生前贈与加算の期間が「相続開始前3年以内」から「相続開始前7年以内」へ延長されたことです(2024年1月以後の贈与から段階的に適用され、2031年以降に発生する相続で完全に7年間が適用対象となります)。

延長された4年分(3年超7年以内)の贈与については、合計100万円までは相続財産に加算しない緩和措置がありますが、それでも暦年課税で「相続直前の駆け込み贈与」による節税効果は薄まる方向にあります。

この結果、「暦年課税は加算期間が延びて不利になった一方、相続時精算課税は基礎控除110万円という新しい非課税枠ができた」という、両制度の立ち位置が近づく改正になった、と整理すると分かりやすいです。

暦年課税と相続時精算課税、結局どちらを選ぶべき?

一概には言えませんが、判断のヒントとなる考え方を整理します。

比較項目暦年課税相続時精算課税
毎年の非課税枠110万円110万円(2024年改正で新設)
まとまった贈与累進税率(10〜55%)累計2,500万円まで非課税、超過分は一律20%
相続財産への加算相続開始前7年以内の贈与が対象(段階適用)基礎控除110万円超の部分は原則すべて加算
制度の後戻り可能一度選択すると同じ贈与者からは戻せない
向いているケース長期間・少額をコツコツ、相続人以外にも贈与したいまとまった財産や収益物件を早めに移転したい、110万円の非課税枠を確実に残したい

たとえば、値上がりが見込まれる株式や、家賃収入を生む収益不動産を早めに贈与しておきたい場合は、相続時精算課税で贈与時点の評価額を「固定」できるメリットが活きてきます。一方で、贈与する相手が孫や子の配偶者など相続人以外にも及ぶ場合や、まだ贈与総額の見通しが立たない場合は、暦年課税の柔軟性が向いていることもあります。

まとめ

2024年の改正により、相続時精算課税制度は「基礎控除110万円」という毎年使える非課税枠を手に入れ、以前より格段に使い勝手のよい制度になりました。あわせて、災害で被害を受けた不動産の価額を見直せる特例も新設され、想定外の事態にも一定の配慮がなされています。

一方で、暦年課税の生前贈与加算期間が7年に延びたことで、どちらの制度を選ぶかは以前にも増して「いつ、誰に、何を、どれくらい贈与したいか」という個々の事情次第になってきています。制度は一度選択すると後戻りができないものもあるため、贈与を検討する際は最新の税制を踏まえたうえで、税理士など専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

(本記事は2026年8月時点の情報にもとづいています。相続時精算課税制度に関する2026年度〈令和8年度〉税制改正大綱では、賃貸不動産の評価方法の見直しなど別項目の改正はあるものの、本記事で扱った基礎控除110万円・災害特例・生前贈与加算7年ルールの枠組みに変更はありません。)

参考資料

  • URLをコピーしました!
目次