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休眠担保権の抹消が簡単になった!30年ルールで単独申請できる新制度を詳しく解説

「登記簿を見たら、何十年も前に解散したはずの会社が抵当権者になっていた……」

そんなケースでお困りではないでしょうか。古い抵当権が残ったままだと、不動産の売却や担保設定の際に大きな支障をきたします。

令和5年(2023年)4月1日、不動産登記法第70条の2が施行され、一定の要件を満たす場合には不動産の所有者が法務局へ単独で抹消登記を申請できる新制度が誕生しました。

本記事では、この「休眠担保権の単独抹消制度」について、司法書士の立場からわかりやすく解説します。


目次

休眠担保権(休眠抵当権)とは

「休眠担保権」とは、被担保債権がすでに消滅しているにもかかわらず、登記だけが残り続けている抵当権・質権・先取特権のことを実務上こう呼びます。

明治・大正・戦前の昭和に設定された古い抵当権が、農地や先祖代々の土地の登記簿に今なお残っているケースが少なくありません。

担保権の登記は、当事者が共同して申請しないと抹消できないのが原則(不動産登記法60条)です。しかし、抵当権者である法人がすでに解散・消滅していれば、共同申請のしようがありません。これが問題の核心です。

💡 よくある具体例
抵当権者が「○○信用購買販売利用組合」「△△農業会」「□□信用組合」など、戦後の法整備で解散・合併した法人になっているケースが典型的です。

改正前の問題点〜なぜ抹消が難しかったのか

改正前の不動産登記法第70条第3項後段には、法人が「所在不明」の場合に供託を条件として単独で抵当権を抹消できる制度がありました(被担保債権の弁済期から20年経過が要件)。

しかしこの制度は、法人の「所在不明」の要件が非常に厳しく解釈されていました。具体的には、

  • 商業・法人登記簿に記録がなく、
  • 閉鎖登記簿も保存期間を経過して廃棄されている場合

に限定されていたため、閉鎖登記簿が取れる法人には使えないという問題がありました。

また、閉鎖登記簿があっても清算人の生死・所在が不明な場合には、裁判所に清算人選任の申立てをして(費用は10万円以上)、選任された清算人との間で共同申請するという迂回路しかなく、費用・時間ともに大きな負担がかかっていました。

新制度「不動産登記法第70条の2」の概要

令和3年(2021年)の民法・不動産登記法改正により、不動産登記法第70条の2が新設され、令和5年(2023年)4月1日から施行されました。

【不動産登記法第70条の2(条文)】

登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき法人が解散し、前条第2項に規定する方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないためその法人と共同して先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請することができない場合において、被担保債権の弁済期から30年を経過し、かつ、その法人の解散の日から30年を経過したときは、第60条の規定にかかわらず、単独で当該登記の抹消を申請することができる

ひとことで言えば、「解散から30年・弁済期から30年が経過した法人の担保権は、清算人を探して一定の調査をすれば、所有者が単独で抹消できる」制度です。

単独抹消申請の4つの要件

次の4つすべてを満たす必要があります。

1.担保権の登記名義人が「解散した法人」であること

通常の解散のほか、休眠会社として解散したとみなされた場合(会社法472条等)や、根拠法の廃止に伴い解散した法人も対象に含まれます。

2.一定の調査を尽くしても、清算人の所在が判明しないこと

後述の方法で清算人を調査し、所在不明であることを証明する必要があります。現地調査(近隣住民への聞き込み等)は不要です。

3.被担保債権の弁済期から30年を経過していること

弁済期の確認は登記簿の記載、閉鎖登記簿、または申請人が提出する資料によります。根抵当権の場合は元本確定日または設定日から3年経過した日が弁済期とみなされます。

4.その法人が解散した日から30年を経過していること

閉鎖登記簿が廃棄済みで解散日を確認できない場合も、解散後30年経過している蓋然性が極めて高いとして同様に取り扱われます。

⚠️ 注意:清算人が生存・所在明の場合は対象外
4つの要件を形式上満たすケースでも、清算人が実際に生存していて所在が判明した場合は、その清算人と共同申請しなければなりません。この特例は使えません。

手続きの流れ(新制度・70条の2)

①法人の登記簿(閉鎖登記簿)を取得する

法人の本店(主たる事務所)の所在地を管轄する法務局で閉鎖登記簿謄本を取得します。解散日・清算人の情報を確認します。閉鎖登記簿が廃棄済みの場合は、廃棄済みの証明書を取得します。

②清算人の所在を調査する

閉鎖登記簿に記載された清算人について、次の調査を行います。

  • 登記上の住所への不在住証明書の取得
  • 登記上の住所を本籍地とする不在籍証明書の取得
  • 法人の本店所在地・清算人の住所宛てに配達証明付き書留郵便を送付し、不達の場合はその封筒を保管

③調査報告書を作成する

調査の経緯・結果をまとめた報告書を作成します。収集した書類(不在住証明書等)を添付します。

④法務局へ単独で抹消申請をする

不動産の所在地を管轄する法務局に抹消申請を行います。登記原因:「不動産登記法第70条の2の規定による抹消」(日付の記載は不要)。供託は不要です。

主な必要書類

書類証明する内容
法人の閉鎖登記簿謄本解散の事実・解散日・清算人の氏名住所
不動産の閉鎖登記簿謄本または現行登記事項証明書被担保債権の弁済期
不在住証明書・不在籍証明書清算人が登記上の住所に不在であること
不達の配達証明付き書留郵便の封筒不在住証明書等が取れない市区町村の場合に代替利用
調査報告書(収集書類を添付)清算人の所在が判明しないことを証明
金銭消費貸借契約証書等(存在する場合)弁済期の補完資料

📋 法務局によって取り扱いが異なる点に注意
調査報告書の添付について、「収集書類のみで足りる」とする法務局と「報告書形式での提出を求める」法務局があります。申請前に管轄の法務局に確認するか、司法書士にご相談ください。

よくある疑問

Q. 閉鎖登記簿が廃棄されて取れない場合はどうなりますか?

閉鎖登記簿の保存期間は閉鎖日から20年です。解散後10年で閉鎖できることから、閉鎖登記簿が廃棄されているケースは解散から30年以上経過している蓋然性が極めて高いとされています。この場合、解散日は確認できませんが、「解散から30年経過しているケース」と同様に取り扱われます(解散日の確認なしで申請可)。

Q. 根抵当権も対象になりますか?

なります。根抵当権の場合、弁済期は元本確定日とみなします。元本確定の登記がある場合はその日、登記がない場合は根抵当権設定の日から3年経過した日を元本確定日とします。

Q. 弁済期の記載が登記簿にない場合は?

昭和39年の改正前に設定された担保権の場合、当時は弁済期が登記事項でしたが、改正後の移記・転写の際に省略されたケースがあります。この場合は閉鎖登記簿を参照します。それでも確認できない場合は、申請人が提出する資料(金銭消費貸借契約証書等)によって判定します。

Q. 新制度と旧制度(70条3項後段)は同時に使えますか?

両制度は別個の根拠規定として並存します。弁済期から30年・解散から30年を経過していれば、旧制度(供託あり)と新制度(供託なし)のいずれかを選択できます(通常は供託不要の新制度が有利)。

まとめ

不動産登記法第70条の2による休眠担保権の単独抹消制度は、不動産取引の円滑化という観点から非常に重要な改正です。要点を整理しておきます。

📌 制度のポイントまとめ

  • 対象:解散した法人を登記名義人とする先取特権・質権・抵当権
  • 要件:弁済期から30年+解散から30年の経過、清算人の所在不明
  • メリット:供託不要・裁判所手続不要で法務局への単独申請が可能
  • 施行日:令和5年(2023年)4月1日(同日前に設定された担保権も対象)
  • 登記原因:「不動産登記法第70条の2の規定による抹消」(日付不要)

ただし、清算人の調査方法・調査報告書の作成・弁済期の確認など、手続きには専門知識が必要です。「登記簿に古い抵当権が残っている」「不動産の売却や相続でお困り」という方は、お早めに司法書士にご相談ください。

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