相続では、相続人が相続の判断(承認・放棄)をする前に亡くなることがあります。
このとき発生するのが再転相続(さいてんそうぞく)です。

① 再転相続の基本構造
祖父 死亡
↓
父が相続人になる
↓
父が相続放棄などを決める前に死亡
↓
子が父の立場を引き継ぐ
このとき、子は父の立場を引き継いで祖父の相続を判断できます。
② 再転相続が起きたときの状態
子は実は 2つの相続の立場を持ちます。
①祖父の相続
祖父 → 父 → 子
②父の相続
父 → 子
つまり
子
├ 祖父の相続(父の立場を引き継ぐ)
└ 父の相続
この状態の人を再転相続人といいます。
③ 子が選べる選択肢
子には次の選択肢があります。
①祖父の相続を承認する
祖父
│ 相続
父
│ 相続
子
祖父の財産も借金も父の代わりに引き継ぎます。
※この時に、父の相続を先行して放棄した場合は、祖父の相続を承認するか、放棄するかの選択権はなくなります。
②祖父の相続を放棄する
祖父
× 放棄
父
│ 別途判断
子
この場合
- 祖父の借金 → 引き継がない
- 父の相続 → 別途判断
となります。
③祖父と父の両方を放棄
祖父
× 放棄
父
× 放棄
子
子は
- 祖父の相続人
- 父の相続人
どちらでもなくなります。
④ 相続放棄の期限
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月の期間以内に原則はしないといけません。
再転相続の場合の相続放棄は、相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が、当該死亡した者からの相続により、当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を、自己が承継した事実を知った時と解されています。
【参考 最判令元・8.9民集73巻3号293項】
⑤ 手続きの重要ポイント
再転相続では祖父の相続と父の相続は別手続きです。
家庭裁判所への申述 ①祖父の相続放棄 ②父の相続放棄
2つ必要になることがあります。
まとめ
再転相続は、相続人が相続の承認や放棄をする前に亡くなった場合に生じるため、通常の相続よりも関係が複雑になりやすい制度です。
例えば、祖父の相続について父が判断をしないまま亡くなった場合、子は父の相続人として 祖父の相続についても判断する立場になります。
そのため、
- 父の相続
- 祖父の相続
という 二つの相続関係を同時に検討する必要がある場合があります。
もっとも、相続では後になって
- 祖父に思いもよらない借金があった
- 相続財産の内容が後から判明した
といったケースも少なくありません。
このような場合でも、法律上は 相続放棄という手段が用意されており、一定期間内であれば家庭裁判所で手続きを行うことで、負債を引き継がない選択をすることが可能です。
また、事情によっては
- 熟慮期間の起算点が問題となる場合
- 相続財産の状況を後から知った場合
など、判例や個別事情により判断が異なることもあります。
そのため、再転相続のように相続関係が複雑な場合には、相続関係や財産の状況を整理したうえで、早めに対応を検討することが重要といえるでしょう。
※本記事は再転相続に関する一般的な考え方を整理したものです。
実際の相続では、家族関係、相続財産の内容、事情を知った時期などにより、判断や手続が事例ごとに異なる場合があります。
具体的な対応については、個別の事情に応じた検討が必要となる場合があります。
