成年後見制度について、「後見・保佐・補助が一本化されるらしい」という話を耳にした方も多いのではないでしょうか。
現在、法制審議会で進められている成年後見制度の見直しでは、従来の3類型を廃止し、“補助”を中心とした一つの制度へ再構築する方向性が示されています。
この記事では、
- いまの制度の仕組み
- 一本化とはどういう意味か
- 何がどう変わるのか
- 司法書士実務への影響
を、できるだけ分かりやすく解説します。
目次
現行の成年後見制度のおさらい
現在の法定後見制度には、本人の判断能力の程度に応じて次の3つの類型があります。
- 成年後見(判断能力を欠く常況)
- 保佐(判断能力が著しく不十分)
- 補助(判断能力が不十分)
家庭裁判所が本人の状態を見て、どの類型に当てはまるかを判断します。
なぜ見直しが必要なのか
現行制度については、次のような課題が指摘されています。
- 一度開始すると原則「終身」になりやすい
- 本人の回復や状態変化が反映されにくい
- 類型の境界があいまいで運用が難しい
- 包括的な代理権により、自己決定が制限されやすい
これらを踏まえ、「本人の意思と能力に応じた、より柔軟な支援制度」への転換が検討されています。
見直しの最大ポイント:3類型を一本化
検討されている方向性は、
後見・保佐・補助という区分を廃止し、原則として“補助制度”に一本化する
というものです。
そのうえで、
- どの行為について
- どの範囲で
- どんな権限を付与するか
を、家庭裁判所が個別に設計する仕組みにする案が示されています。
制度「前」と「後」の比較
| 項目 | 現行制度 | 見直し後(検討案) |
|---|---|---|
| 類型 | 後見・保佐・補助の3類型 | 補助制度に一本化 |
| 権限の与え方 | 類型ごとに定型的 | 行為ごとに個別設計 |
| 利用期間 | 原則終身 | 必要性がなくなれば終了可能 |
| 本人の意思反映 | 限定的 | より重視 |
終身制度の見直し
見直し案では、支援の必要性が低下した場合に、
- 権限を縮小
- 制度を終了
できる仕組みを導入する方向で検討されています。
「一度使うと一生抜けられない制度」からの転換です。
代理権・同意権はどうなる?
包括的にすべての法律行為を代理するのではなく、
- 不動産の売却
- 預貯金の解約
- 施設入所契約
など、必要な行為だけを指定して付与する方式が想定されています。
司法書士実務への影響
- 申立書作成時に「どの行為について支援が必要か」をより詳細に検討
- 医師意見書・本人意向の重要性が増す
- 定期的な見直し・変更申立ての増加
申立支援・制度設計を行う専門職として、司法書士の役割はさらに重要になります。
よくある質問(Q&A)
Q1:すでに後見を使っている人はどうなる?
A:直ちに変更されるわけではなく、経過措置が設けられる見込みです。
Q2:いつから変わる?
A:現在は審議段階で、法案成立時期は未定です。
Q3:任意後見制度はどうなる?
A:今回の中心テーマは法定後見制度で、任意後見の基本構造は維持される見込みです。
まとめ
- 後見・保佐・補助の3類型を一本化
- 補助制度をベースに個別設計型へ
- 本人の意思尊重と柔軟性を重視
成年後見制度は「管理型」から「支援型」へと大きく転換しようとしています。
今後の動向を継続的にチェックしていくことが重要です。